戦略的創造研究推進事業 CRONOS
2026年度 応募 傾向と対策
CRONOS = Cutting-edge Research and Development on Information & Communication Sciences
採択率急落:8.0%(2025年度)
総額2.2億〜3億円/件(5.5年・間接費込)
2段階選考:書類→面接
GC00:自由提案型グランドチャレンジ可
Society 5.0以降を見据えた革新的な情報通信技術の創出と研究人材育成を目指すJSTの戦略プログラム。採択率が急落する中、本ガイドで差別化のポイントを把握してください。
制度の概要と位置づけ
CRONOSの全体像・採択率推移・他プログラムとの比較
CRONOSとは
JST(科学技術振興機構)が実施する戦略的創造研究推進事業の一つです。「情報通信科学の常識を変えるビジョンがあり社会問題への大きなインパクトをもたらす挑戦的な目標(グランドチャレンジ)」を掲げた革新的研究を支援します。Society 5.0以降の社会基盤となる情報通信技術の創出と、その担い手となる高度研究人材の育成が事業の根幹です。
運営体制
| 役職 | 担当者 | 役割 |
|---|---|---|
| PD | 篠原弘道(NTT株式会社相談役) | 全体統括・採択課題の最終決定 |
| PA | 複数名 | PDを補佐、プログラム計画策定・見直し |
| PO(中尾領域) | 中尾彰宏 | 主に情報通信分野の各領域マネジメント |
| PO(川原領域) | 川原圭博 | 主に情報処理分野の各領域マネジメント |
| AD | 各領域外部有識者 | PO補佐・専門的観点からの助言 |
採択率の推移
採択率急落を直視する
2年連続で採択率が低下しており、2025年度は8.0%まで落ちています。「とりあえず出す」提案では早期脱落の可能性が高く、徹底した差別化戦略が必要です。
制度スペックサマリー
他プログラムとの比較上の特徴
- 研究期間が長い(5.5年):科研費基盤研究(3〜5年)より長期で、インパクトある研究構想を描ける。一方で研究目標の中長期的な妥当性も問われる
- 2フェーズ構成(基盤研究+移行研究):基礎研究から概念実証(POC)までのスパイラルアップ型運用が制度的に担保されている
- NICT総合テストベッドとの連携:大型の情報通信インフラを活用した実証実験が可能(testbed.nict.go.jp)
- PO等によるマネジメント:採択後も研究指導・評価が行われ、増減額・課題中止も有り得る。柔軟な研究展開が期待される反面、成果管理は厳密
年次変化の比較(前年度→2026年度)
2025年度との差分・新設事項・継続事項
| 項目 | 変化区分 | 内容・詳細 |
|---|---|---|
| 生成AI利用規定 | NEW | 2026年度から「生成AIの利用について」が第4.1章として新設。提案書作成時の生成AI利用に関する規定が設けられた。提出前に必ず精読が必要 |
| GC策定プロセス | 変更 | NSFのDear Colleague Letters制度を参考にした研究者コミュニティとの対話プロセスを導入。2024年12月に有識者ワークショップを開催(45名招待・36件情報提供)し、GC設計に反映 |
| 面接選考の日程 | 変更 | 2024年度(土日)→ 2025年度(月火)→ 2026年度(7月下旬〜8月上旬、具体日はJSTが指定)。スケジュール確保に注意 |
| 採択率(2025年度実績) | 要注目 | 8.0%(応募138件、採択11件:当初8件予定→追加3件採択)。2024年度12.2%から急落。2026年度もこの傾向が継続する可能性あり |
| e-Rad締切の絶対性 | 重要 | 「いかなる理由があっても審査対象外」とJSTが明記。引き続き厳格に運用。締切間近はシステム混雑に注意 |
| 応募締切 | 確認 | 2026年5月20日(水)12:00(正午)【e-Rad受付期限】 |
| GC設定 | 継続 | GC01〜GC06(2領域合計6つ)+GC00(自由提案)の体制を継続 |
| 募集開始 | 早期化 | 2024年4月25日 → 2025年3月5日 → 2026年3月4日(早期化傾向が継続)。公募情報ページを早めにブックマーク |
| 研究期間 | 変化なし | 5.5年(変化なし) |
2026年度 特に注意すべき変化
- 生成AIの利用について明示的な規定が新設(4.1章):見落としによる不受理・審査上の問題を防ぐため、必ず確認すること
- 採択率が12.2%→8.0%と急落:2026年度もこの傾向が継続する可能性があり、「常識を変える発想」の明確な提示が例年以上に重要
- GC策定プロセスが刷新:研究者コミュニティとの対話を経てGC内容が設定されており、各GCの背景にある社会課題・技術課題を深く理解した提案が求められる
グランドチャレンジ(GC)詳細
2026年度のGC一覧・技術カテゴリー・GC00の活用
グランドチャレンジのコンセプト(4条件)
採択されるグランドチャレンジとは何か
- ① 常識を変える発想:情報通信科学の既存の枠組みを根底から覆す革新的ビジョン
- ② 基礎研究による技術ブレークスルー:既存技術の延長ではなく、基礎研究を起点とした技術的跳躍
- ③ 社会問題への大きなインパクト:情報通信分野を通じた社会問題解決への明確な貢献
- ④ 概念実証による技術価値の評価:基盤研究の成果をPOCで実証可能な構想
2026年度 グランドチャレンジ一覧
サイバーインフラ・アーキテクチャの革新
情報通信基盤のアーキテクチャレベルからの根本的革新。将来のネットワーク設計原理・構造の変革を目指す。
サイバーインフラを支える要素技術の革新
通信・センシング・符号化・認識・最適化等の要素技術における常識を変えるブレークスルー。
サイバーインフラを駆動するサービス・セキュリティの革新
情報通信インフラ上で展開されるサービス層・セキュリティ機構の革新。サイバー攻撃・セキュリティ運用等を含む。
基盤アーキテクチャとサービス・アプリケーションの密結合による新価値の創出
計算基盤・アーキテクチャとサービス・アプリケーション層の融合による新たな価値創造。
データによる意思決定支援システムと予測の不確実性の克服
データ駆動型意思決定・予測システムの高度化と、その不確実性を本質的に克服する情報処理技術。
ベンチマーク・データセットドリブンで領域を発展させる情報通信の新領域
ベンチマーク・データセット主導で情報通信の新分野を切り拓く研究。領域の評価軸そのものを革新する提案。
提案者が設定するグランドチャレンジ(自由提案型)
GC01〜GC06に当てはまらない場合でも応募可能。様式2にグランドチャレンジのタイトルおよび概要を記載することが必須。自らが設定するGCが既定のGCに代わる革新性・社会インパクトを持つことを明確に示すこと。
技術カテゴリー(TC)一覧
中尾領域(TC1〜TC4)
- TC1:通信サービス
- TC2:情報通信基盤(センシング・収集・符号化・圧縮・認識・分類・最適化・制御・学習)
- TC3:ネットワークセキュリティ(サイバー攻撃・セキュリティ運用系)
- TC4:デバイス・通信方式(電波・光・量子等の通信)
川原領域(TC5〜TC8)
- TC5:情報サービス
- TC6:情報処理基盤(センシング・収集・符号化・圧縮・認識・分類・最適化・制御・学習)
- TC7:情報セキュリティ(暗号・認証・プライバシー系)
- TC8:デバイス・計算方式(電子・光・量子等の回路)
応募時の重要な留意点
- 様式1において応募する領域を1つ選択し、e-Radにおいて技術カテゴリー(複数選択可)を選択
- グランドチャレンジは今後の研究開発動向・産業動向・社会ニーズ等に応じて見直しを行う場合がある
- GC00(提案者設定型)を選択した場合は、様式2にグランドチャレンジのタイトルおよび概要を記載すること(必須)
基盤研究・移行研究スキーム(事業固有)
2フェーズ構成・スパイラルアップ型運用の詳細
2フェーズ構成の詳細
基盤研究(Foundation Research)
- 公募による採択・評価の対象フェーズ
- グランドチャレンジ達成に向けた全体構想および基盤研究の具体的内容・計画を中心に評価
- 国際的にもトップレベルの技術ブレークスルーを起こす成果創出と高度研究人材育成が目標
- 提案書に記載する予算は基盤研究費のみ(移行研究費は含めない)
移行研究(Transition Research / POC)
- 基盤研究期間中に、採択された研究開発代表者がPO等に対してPOC等の計画を提案
- 年1回程度のプログラム内募集による提案・審査で対象を決定(全課題に予算は措置されない)
- 企業研究への移行、大学発ベンチャー創出促進などの成果を目指す
- 倫理・社会受容性・法規制の検討も含めることが期待される
スパイラルアップ型運用の特徴
- 基礎研究と応用研究の垣根を越える:両フェーズが有機的に結合した研究展開が可能
- 計画の柔軟な見直し:移行研究の過程で基盤研究の計画見直しや実施体制の最適化も可能
- テストベッド活用:NICT総合テストベッド(testbed.nict.go.jp)との連携活用が可能。大規模インフラを用いた実証実験の機会
移行研究に関する重大な誤解を避ける
移行研究は採択後に別途競争的審査を経て初めて実施可能になります。採択されたすべての課題が移行研究を実施できるわけではありません。提案書の予算計画に移行研究費を記載することも禁止されています。
審査スケジュール
2026年度 公募から研究開始までのタイムライン
審査・評価基準
公式評価観点+採択実績から読み取る暗黙の評価傾向
書類選考の評価観点(公式)
| 評価観点 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 革新性・独創性 | グランドチャレンジ達成に向けた全体構想が情報通信科学の常識を変えるほど革新的・独創的か |
| 計画の質 | 基盤研究の具体的な内容・実施計画が科学的に妥当かつ高い水準にあるか |
| 研究者の能力・実績 | 研究開発代表者が当該テーマを推進するに足る研究能力・実績を有するか |
| 研究体制の適切性 | 提案された研究体制(分担・外部連携等)がGC達成に向けて適切に構成されているか。若手研究者の積極的参画も評価対象 |
| GC達成構想の妥当性 | 移行研究の想定を含めた全体のグランドチャレンジ達成に向けた構想が具体的で妥当か |
面接選考の評価観点
書類選考の評価観点に加え、対話を通じて研究ビジョン・構想力を評価します。PO等が研究内容の詳細を確認し、GCへの貢献度や研究展開の実現可能性を問う質問が行われます。
採択実績から読み取れる暗黙の評価傾向
PDコメント・採択テーマ傾向から見える評価の重点
- 革新性と社会インパクトの重視:2025年度PDコメントで明確に表明。「ステークホルダーとの連携や社会受容性の観点での支援」も評価に反映
- 異なる技術階層の融合:採択課題に「通信+センシング」「AI+デバイス」等の技術融合テーマが多く見られる傾向
- 「常識を変える発想」の明示:一読して革新的ビジョンが伝わる提案が高評価を獲得
- 若手研究者の積極的参画:博士課程・修士課程学生の研究参画計画が明示された提案が奨励されている
過年度採択例(中尾領域):光トータル・ディスアグリゲーション、学習型符号化と生成AIの統合、生体データ通信インフラの無線フルボディ化
過年度採択例(川原領域):高融合性ツール基盤技術によるアニメ共創環境、視覚情報の時空間スパース性を活用した計測・通信・制御の協調設計、テラヘルツ誘起超音波とロボットの融合
落とし穴と対策
通常の落とし穴(赤●)+事業固有(★紫)の計11項目
締切間近はe-Radのサーバーが混雑し、ページ遷移の遅延・提案書アップロード障害が多発します。「いかなる理由があっても審査対象外」とJSTが明記しており、システムトラブルを言い訳にできません。
遅くとも5月19日(前日)までにe-Radへのアップロードを完了させること。公募情報ページを随時確認し、システムメンテナンス情報も把握しておく。
不受理の主な原因:異なる事業の様式を使用・様式1(研究開発提案書・表紙)の欠落・PDF化時の文字化け・記載項目の重大な入力漏れ・提案書全体3MB超過・フォントサイズ10.5pt未満または書式設定の変更等。不受理となった場合は再提出の機会が与えられません。
JSTが提供する最新の提案書様式を公募情報ページから必ずダウンロード。様式1の表紙が存在することを確認。PDF化後に文字化けがないかを必ず確認すること。
e-Radの記載と提案書本文の記載が相違した場合は「提案書本文の記載を正として扱う」とJSTが明記。ただし不一致が発覚した場合、審査上の混乱や印象悪化につながります。
e-Radの所属機関・役職等の記載と提案書本文の記載を提出前に必ず照合し、一致させること。特に連名・兼任等の複雑な所属の場合は要注意。
「研究開発提案書には【基盤研究】の研究費の計画のみ記載してください」と明記されています。移行研究費を含めて計算した場合、予算上限超過・不適格と判断される可能性があります。
提案書の予算計画は基盤研究分のみを記載する。移行研究は採択後に別途POCとして提案する機会があるため、提案書には「基盤研究だけで意義ある成果が出る」計画を記述する。
2025年度採択率は8.0%(2024年度12.2%から急落)。書類選考での早期脱落が増加しており、「既存研究の延長」と判断される提案はほぼ採択されません。
「自分の研究がこのGCにおいて他の提案とどう差別化されるか」を徹底的に考え抜き、「常識を変える発想」を前面に出す提案を構築すること。革新性のメッセージを提案書の冒頭から明確に打ち出す。
中尾領域(主に情報通信分野・TC1〜TC4)と川原領域(主に情報処理分野・TC5〜TC8)は別々の選考・採択が行われ、審査するPOが異なります。間違った領域への応募では、専門的観点からの評価を受けられません。
自身の研究テーマがTC1〜TC4(中尾領域:通信方式・ネットワーク・セキュリティ等)とTC5〜TC8(川原領域:情報処理・計算方式・情報セキュリティ等)のどちらに重心があるかを確認し、適切な領域を選択する。
GC01〜GC06に当てはまらない革新的提案もGC00として応募可能ですが、見落としている研究者が多い。また、GC00を選択した場合は様式2にグランドチャレンジのタイトルと概要を記載することが必須で、これを怠ると不受理になる可能性があります。
既定GCへの適合に無理がある場合はGC00を積極的に選択し、自ら設定するグランドチャレンジのタイトルと概要を様式2に明確に記述する。独自GCの社会的意義・革新性を説得力をもって示すこと。
本プログラムは若手研究者(博士課程学生・修士課程学生等)の積極的な参画と育成を重視しており、研究体制の評価にも影響します。「とりあえず名前を入れる」だけでは不十分で、具体的な役割と育成計画の記述が求められます。
博士課程学生・修士課程学生の研究への参画計画を明示的に記載する。単なる補助ではなく、GC達成に向けて担う具体的な研究役割を示すことが効果的。
2026年度から「生成AIの利用について」が第4.1章として新設されました。提案書作成時の生成AI利用に関する具体的な規定が設けられており、これを把握せずに提案書を作成した場合、要件違反となる可能性があります。
募集要項第4.1章を精読し、提案書における生成AI利用の可否・条件を確認した上で適切に対応すること。利用した場合の記述義務等の有無を特に確認する。
e-Radに「研究インテグリティおよび研究セキュリティに係る情報」を登録していること、および「研究倫理教育プログラムの修了」が応募要件として設定されています。これらが未完了の場合、応募資格を満たさないとして不受理になります。
応募前にe-Radで研究インテグリティ情報の登録状況を確認すること(2022年3月15日以降未登録の場合は要登録)。研究倫理教育プログラムの修了証明を事前に用意する。
移行研究(POC)は採択後に「年1回程度のプログラム内募集による提案・審査」で対象が決定されます。すべての採択課題に移行研究の予算が措置されるとは限りません。採択後すぐにPOCが実施できると想定して計画を立てると、研究の根幹が揺らぎます。
提案段階から「基盤研究だけでも意義ある成果が出せる」計画を立案しつつ、移行研究への展開構想も描いておくこと。両立する計画の論理的整合性を提案書で示すことが高評価につながる。
応募チェックリスト
公募開始〜研究開始まで4段階のチェックリスト(印刷対応)
【A】公募開始〜説明会まで(〜4月3日)
【B】書類作成(〜5月19日)
【C】提出時(5月20日 正午厳守)
【D】採択後・研究開始準備
採択率向上のための最重要3原則
- 原則1 — 「常識を変える発想」の明確な提示:既存研究の延長ではなく、情報通信科学の常識を覆す革新的なビジョンを一読して伝わるように記述する
- 原則2 — グランドチャレンジとの明確な接続:自身の研究がGCのどの側面にどのように貢献するかを具体的に示す(GC00の場合は独自GCの社会的意義を明確に)
- 原則3 — 基盤研究と移行研究の展開構想の一体性:「基盤研究だけでも成果がある」×「将来的にPOCへ展開できる」の両立を論理的に示す
問い合わせ先
| 機関 | 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) |
|---|---|
| 部署 | 未来創造研究開発推進部 |
| cronos[at]jst.go.jp([at]を@に置換してご利用ください) | |
| 公募情報ページ | https://www.jst.go.jp/kisoken/cronos/koubo/2026/index.html |
